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CEMEX Holdings Philippines(CHP)をIPOで買って9年保有した結果|10.75PHPが1PHP以下になるまで

2016年のIPOでCHPを10,000株取得し、そのまま保有し続けた。売却せずに9年が経過した現在、株価は10.75PHPから約1PHP以下へ91%下落。フィリピン最大級のIPOの一つがたどった現実を記録する。

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CEMEXのIPOに申し込んだのは、セメントはフィリピンの成長に絶対に必要だと思ったからだ。ドゥテルテ政権が大規模なインフラ投資(Build Build Build)を掲げていた時期で、道路・橋・空港の建設が進めばセメント需要も増えるはずだという読みがあった。理屈としては間違っていなかったと今でも思う。ただ、それが株価の上昇につながるかどうかは別の話だった。

CEMEX Holdings Philippines(CHP)IPO参加から現在まで

2016年7月18日、CEMEX Holdings Philippines, Inc.(ティッカー:CHP)がPSE(フィリピン証券取引所)に上場した。IPO価格は10.75PHP。当初17PHPで計画されていた公募価格が大幅に引き下げられた上での上場だった。

CEMEX Holdings Philippinesとはどんな会社か

CEMEX Holdings Philippinesは、メキシコに本社を置く世界的なセメント大手CEMEXのフィリピン子会社として設立された企業だ。フィリピン国内においては、APO Cement CorporationとSolid Cementという二つのセメントメーカーを傘下に持ち、APO・Island・Rizalという三つのブランドでセメントを製造・販売していた。

APOブランドはフィリピン南部を中心に強い認知度を持ち、Islandブランドは中部ビサヤ地方、Rizalブランドはルソン島を主な販売エリアとしてきた。こうした地域分散した販売ネットワークが、事業の安定性を支える土台とされていた。

セメントは建設現場や土木工事において欠かせない基礎資材だ。住宅・商業施設・道路・橋梁・空港といったあらゆる建設プロジェクトに使用される。フィリピンでは都市化の進行と人口増加によって建設需要が続いており、セメント産業は内需型の安定事業として位置づけられていた。

上場当時はドゥテルテ政権が掲げる「Build Build Build」と呼ばれる大型インフラ投資計画が注目を集めていた。道路・橋梁・鉄道・空港といった大規模インフラ整備が加速すれば、その材料となるセメントの需要が確実に拡大するという見立てがあり、CHPはその直接的な受益企業として期待された。

その後、2025年にCEMEXグループから切り離される形でConcreat Holdings Philippinesに社名変更した。現在はCEMEXとは別の組織として運営されており、銘柄としての性格も上場当初とは大きく変わっている。

2016年のIPOの背景

CHPのIPOは規模の面で際立っていた。調達額は約250億PHP、当時フィリピン史上3番目に大きいIPOだった。市場の注目度は高く、Build Build Buildという明確な政策的追い風が吹いているように見えた時期だった。

ただしIPO価格の決定過程には曲折があった。当初は17PHPでの公募が予定されていたが、市場の需要動向を踏まえて10.75PHPへと大幅に引き下げられた上での上場となった。この価格引き下げ幅は大きく、当初計画の約37%引きという水準だ。IPO前から価格を大きく下げざるを得なかったという事実は、投資家需要が当初の想定よりも弱かったことを示している。後から振り返れば、この引き下げ幅自体が一つのシグナルだったともいえる。

申し込み期間は2016年7月4日から11日。BPI Tradeのオンラインシステムから10,000株を申し込み、全株を取得した。LSI(Local Small Investor)プログラムを通じた申し込みで、手続きはオンラインで完結した。

上場直後の値動き

上場日は2016年7月18日。上場翌週の2016年7月25日、CHPは11.73PHPの高値をつけた。IPO価格10.75PHPから約9%の上昇が最高値となった。初値こそIPO価格を上回ったものの、上値の勢いは限定的で、大型IPOが時として見せるような急騰には至らなかった。

高値をつけた後、株価はじりじりと下落に転じた。このとき売却しなかった。「まだ上がる余地がある」という感覚があったし、Build Build Buildの本格化という期待も持ち続けていた。明確な判断があって保有を続けたというよりも、売る理由が見当たらなかったというのが実態だ。上場直後の数週間は株価の動向を見ながら売却タイミングを探っていたが、結局そのまま何もしないまま時間が過ぎた。

保有を続けた9年間

その後の株価推移は厳しかった。Build Build Buildは政策として推進されたものの、その効果がセメント企業の業績に反映されるまでには時間がかかった。さらに業界全体の逆風が重なった。建設コストの上昇、国内セメント市場の競争激化、国際的な原材料費の高騰、収益の悪化といった問題が積み重なる中で、株価は下落を続けた。

親会社であるCEMEXグループの財務問題も株価に影響した。メキシコに本社を置くCEMEXは、リーマンショック後に積み上がった多額の負債を長年かけて処理する過程にあり、グループ全体の財務的な重さがフィリピル子会社の評価にも影を落とした。国内事業のファンダメンタルズだけを見ていても、親会社の財務状況という外部要因を制御することはできなかった。

2022年7月5日には最安値0.58PHPを記録した。IPO価格10.75PHPから約94%が失われた水準だ。元本の94%が消えるという事実を見ながら、それでも売却しなかった。この水準で売却しても意味がないという感覚と、さらに下がるかもしれないという恐れが入り混じっていたが、結果として何もしなかった。

2024年には、DaconがCHPの残存株を1株1.42PHPで公開買い付けを実施した。公開買い付け価格は当時の市場価格を上回るものだったが、この機会にも売却しなかった。損失が大きすぎて心理的に踏み切れなかった部分もあるし、手続きの複雑さに対する億劫さもあった。結果として、この出口機会も活かせなかった。

2025年にはCEMEXグループから切り離され、Concreat Holdings Philippinesへと社名変更した。上場時の看板だった親会社との関係が終わり、銘柄としての性格が根本から変わった。

損益の整理

項目 数量 単価 金額
取得(IPO) 10,000株 10.75PHP 107,500PHP
現在評価額 10,000株 約0.95PHP 約9,500PHP
損益 約−98,000PHP(約−91%)

IPO価格10.75PHPに対して約0.95PHPは、下落率にして約91%に相当する。

現在の状況(2026年5月時点)

9年が経過した現在も、10,000株をそのまま保有している。現在株価は約0.95PHP。元本107,500PHPのうち、約98,000PHPが失われた状態だ。

社名はConcreat Holdings Philippinesとなり、CEMEXという看板はなくなった。流動性は低く、10,000株をまとめて売却しようとすれば市場価格に影響を与えかねない水準でもある。現実的な出口戦略を立てるのが難しい状態が続いている。

振り返って

Build Build Buildへの期待は、当時として理解できるストーリーだった。インフラ投資が加速すればセメント需要が伸びるという見立ては論理として筋が通っていたし、約250億PHPの大型IPOがあれほど注目を集めたことには理由があった。

しかし実際には、政策の追い風よりも企業と業界が抱える課題のほうが重かった。親会社CEMEXグループの財務問題がフィリピル子会社の株価に影響した面もあり、個別企業の国内事業だけを見ていては判断しきれない要素があった。さらに、2024年の公開買い付けというもう一度の出口機会も活かせなかった。

IPO価格から91%下落した状態で保有を続けているという事実は、売り時の判断がいかに難しいかを示している。損失が膨らんでいても売却できない、そして出口機会が来ても踏み切れない。この繰り返しがCHPの9年間だった。

SHLPHと並んで、売り時を判断できなかった典型的なケースとして記録しておく。

フィリピン株式市場で個別株を長期保有し続けることの難しさは、こうした経験を通じて身にしみている。PSEは全体として流動性が薄く、特にCHPのような低位株になると、まとまった株数を適正価格で売却すること自体が難しくなる。流動性の低い市場で判断を先送りし続けると、気づいたときには実質的な出口がなくなっているというのが、CHP保有9年間の現実だ。

IPO時のストーリーと実際の株価の推移はしばしば大きく乖離する。大型IPOであること、有名な親会社の名前がついていること、政策的な追い風があること。これらはIPO参加を後押しする要素にはなるが、長期の株価パフォーマンスを保証するものではない。公募価格の大幅引き下げが示した市場の評価を、もっと真剣に受け止めるべきだったかもしれない。

一連の経緯を通じて学んだことがあるとすれば、「売れるうちに売る」という判断の重要性だ。損失が小さいうちに損切りすること、あるいは利益が出ているうちに利益確定すること。判断を先送りにした結果として生じた損失は、どれだけ時間が経っても取り戻せないことが多い。この記録が、同様の投資判断をしようとしている誰かの参考になれば幸いだ。

CHPはもともとメキシコの親会社の看板を借りる形でフィリピン市場に上場した銘柄だった。親会社の信用力やブランドが株式の評価に組み込まれていたとすれば、グループから切り離されてConcreat Holdings Philippinesになったことは、株式としての価値の根拠が変わったことを意味する。上場時の投資判断の前提が、9年の間に根本から変わってしまっていた。そのことに気づくのが遅すぎた、というのがこの9年間の正直な総括だ。IPO参加の前提にあった「大型インフラ投資の恩恵を受けるセメント会社」という銘柄の本質的な性格は残っていても、親会社の財務、業界の競争環境、価格引き下げの規模など、複数のリスク要因を過小評価していた。大型IPOであるほど、上場前の情報整理と参加判断を丁寧に行うことの重要さを改めて感じている。


※本記事は個人の投資体験の記録です。数字はすべて概算であり、正確性を保証するものではありません。投資は自己責任でお願いします。

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