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PSE投資

フィリピンIPO参加ガイド|BPI TradeとBDO Nomuraで4回以上参加した実体験

はじめに

この記事では、筆者がマカティ在住中にPSEのIPO(新規公開株)に4回以上参加した実体験を書きます。参加したのはいずれもフィリピン市場への上場予定株式のIPOです。

BPI TradeとBDO NomuraのIPO申し込み方法の違い

項目 BPI Trade BDO Nomura
申し込み方法 支店訪問が必要 オンラインで完結
手間 やや手間がかかる 簡単

BPI Tradeでの申し込み手順(支店訪問の実際)

BPI TradeでIPOに申し込む際は、以下の流れになります。

1. IPO情報の確認 BPI TradeのウェブポータルやPSE(フィリピン証券取引所)の公式サイトで、募集期間・公募価格・最低申込株数を確認します。PhilStar、Business Mirror、Manila Bulletinといった英字紙にも掲載されます。BPI Tradeのポータルに「Upcoming IPOs」に近い案内が掲載されることもありましたが、網羅性という点ではPSE公式サイトの確認を習慣にしていました。

2. BPI支店への来店 募集期間中(通常1〜2週間)にBPI支店の窓口を訪問します。すべての支店でIPO申し込みを受け付けているわけではないため、事前に電話で確認してから足を運ぶのが無難です。筆者はアヤラ通り沿いの支店を利用していました。

3. 申し込み用紙の記入 窓口で所定の申込書を受け取り、銘柄名・申込株数・引き落とし口座を英語で記入します。書式はシンプルで、英語が苦手でも迷う箇所は少ないです。

4. 申し込み代金のロック 申込金額分がBPI口座に残高として存在していることが前提です。申し込み後はその金額がロックされ、配分確定まで動かせなくなります。人気銘柄は資金を長く縛られる可能性があるため、生活費と投資資金の分離は重要です。

5. 配分結果の確認と入庫 上場前日〜上場日にかけて配分結果がBPI Trade口座に反映されます。上場当日の朝には取得株式が入庫され、その日から売買が可能になります。

BDO Nomura(現BDO Securities)がオンラインで完結できる点と比べると、支店訪問が必要なBPI Tradeはやや手間がかかります。それでも筆者がBPI Tradeを使い続けた理由は、メインバンクがBPIであり口座間の資金管理がシンプルだったためです。

フィリピンIPOの割り当て方式

日本のIPOは完全抽選制ですが、フィリピンのIPOは申し込み資金が多いほど多くの株式が割り当てられる仕組みです。つまり資金力のある投資家が有利になります。

日本のIPOとの違い

フィリピンIPOに何度か参加して、日本の市場との差を強く感じた点をまとめます。

比較項目 フィリピン(PSE) 日本(東証)
割り当て方式 比例配分(申込金額が多いほど多く取得) 完全抽選制(資金力に関係なく当選確率は同じ)
目論見書の言語 英語・タガログ語のみ 日本語
上場後の流動性 銘柄によって大きく差がある 比較的安定
IPO後の初値 公募割れになるケースも珍しくない 公募を上回るケースが多い(近年)
情報の入手しやすさ 英語での自力収集が必要 日本語で充実
資金ロック期間 申し込み〜上場まで数週間 同程度だが日本語サポートあり

個人的な印象として、フィリピンのIPOは「知名度・規模の大きい企業ほど資金が集中する」傾向が日本以上に強く、中小規模の銘柄は上場後に値動きが乏しくなることが多いと感じました。「IPOは公募より上で始まって利益が出やすい」という日本でのイメージは、フィリピン市場では必ずしも成り立ちません。

実際の結果

4回以上参加して、利益が出たものも損失が出たものも両方ありました。以下に代表的な4案件の詳細を記します。

1. Robinsons Retail Holdings(RRHI)/2013年上場 日常的に利用していたロビンソンズモールを運営するロビンソングループのリテール部門のIPOです。「事業内容が肌でわかる企業」という基準で参加を決めました。上場後は公募価格を上回る水準で推移し、初のフィリピンIPO参加としてプラスの結果で終えられました。「知っている企業に投資する」というシンプルな基準が機能した事例です。

2. Double Dragon Properties(DD)/2014年上場 ジョリビー・フーズ創業者のトニー・タン・カクティオンが立ち上げた不動産デベロッパーです。フィリピンの不動産ブームへの期待感から参加しました。上場後に大きく上昇した局面がありましたが、筆者は早い段階で売却してしまい、その後の上昇分を取り逃しました。「利益確定のタイミングが早すぎた」という反省が強く残った案件です。

3. Pilipinas Shell Petroleum(SHLPH)/2016年上場 シェルブランドのフィリピン石油会社です。知名度と安定配当への期待から参加しましたが、上場後の株価は精彩を欠いた推移が続きました。原油価格の動向に左右される業種特性を甘く見ていたと反省しています。参加した中で最も「期待外れ」だった案件で、資金が長期間塩漬けになりました。

4. Converge ICT Solutions(CNVRG)/2020年上場 フィリピンの急成長インターネットプロバイダーです。コロナ禍での通信需要急増を背景に注目を集め、参加した中で最も応募が集中した案件でした。上場初日に大きく値上がりし、利益確定できました。ただしその後の株価は波乱含みの展開が続いたため、早めに売却判断したのは結果的に正解でした。

IPOで失敗した経験・反省点

最も大きな反省は、「フィリピンでも日本と同様にIPO後は上がる」という思い込みで参加し続けたことです。日本では公募割れが比較的少ないため、フィリピンでも同じ前提で考えていた時期がありました。しかし実際には、特に流動性の低い銘柄では上場後すぐに公募価格を割り込むことも珍しくありません。

また、比例配分方式の特性上「申込金額が多いほど有利」という構造から、1銘柄に資金を集中しすぎてしまいがちでした。Pilipinas Shellの案件では、その後の資金ロックが予想以上に長引き、他の投資機会を逃したと感じています。

さらに、企業情報をすべて英語で読まなければならない点も、日本のIPOとは大きく異なる負担でした。目論見書は数十〜百ページを超える英語文書で、業種によってはタガログ語の規制文書も参照が必要になります。情報収集に割く時間を過小評価していたことも反省点のひとつです。

IPO当選確率・倍率の実感

日本のIPOのような「当選・落選」の概念はなく、申込金額に応じて比例配分される仕組みのため、参加すれば必ず何株かは取得できます。ただし人気銘柄では応募総額が公募規模を大幅に超過するため、申込株数よりも少ない配分になります。

体感として、人気銘柄では申込株数の30〜50%程度の配分になることが多かったです。Converge ICTのような注目案件では、申し込んだ株数のうち実際に割り当てられたのは半数以下でした。一方、あまり注目されない銘柄では申込株数の100%近くが配分されることもありましたが、そうした銘柄は上場後のパフォーマンスも芳しくないことが多く、「全部取れた=それだけ人気がない」と理解するようになりました。

IPO後の株価の動き

参加した案件を振り返ると、上場初日の動きはさまざまでした。RRHIとCNVRGは初日に公募価格を上回る水準で始まり、売却タイミングの判断が重要になりました。SHLPHはほぼ公募価格近辺での始まりから徐々に値を下げていく展開でした。

フィリピン市場全体として、上場初日に「初値買いが急騰→当日中に急落」するパターンをしばしば見かけました。個人的な印象として、フィリピンのリテール投資家は上場初日に売り抜けようとする動きが強く、「上場直後の急騰に飛びつかない」という冷静さが重要だと実感しています。上場後1〜2週間の値動きを見てから判断した方が、感情的な判断を避けやすいです。

フィリピンIPO投資の注意点

  • 流動性リスク:上場後も取引が少なく売りにくい場合あり
  • 情報収集の難しさ:企業情報は英語・タガログ語のみ
  • 資金力による有利不利:富裕層が有利な構造

フィリピンIPOに参加すべきか・すべきでないか

7年間の経験をふまえた、筆者の率直な結論です。

参加をおすすめできる人:

  • フィリピンのビジネス環境・企業動向を日常的に把握している方
  • 英語の目論見書・財務情報を自力で読める方
  • 申し込み資金を数週間ロックしても生活に支障がない方
  • フィリピン株の流動性リスクをある程度理解している方

慎重になった方がいい人:

  • 「IPOは必ず儲かる」という前提で参加しようとしている方
  • 企業の英語情報を読まずに参加しようとしている方
  • フィリピン株の売買経験がほとんどない方
  • 申し込み資金のロックが生活資金に影響する可能性がある方

筆者の個人的な結論は、「フィリピン市場への理解がある程度深まってから参加する」です。最初の数年はPSEでの通常売買を通じて市場の雰囲気・流動性・企業ごとの特性を肌で感じ、そのうえでIPOに挑戦した方が判断精度は上がります。「日本のIPOの感覚でフィリピンのIPOに参加する」のは、期待値を見誤る原因になりやすいと感じています。

まとめ

IPO参加のしやすさという点ではBDO Nomura(現BDO Securities)が優れていました。ただしIPOだからといって必ず利益が出るわけではありません。

※この記事は2013〜2020年の体験をもとにしています。現在の状況は変更されている可能性があります。必ず最新情報をご確認ください。

※投資は自己責任でお願いします。