フィリピンでインデックス投資|BPI UITFを7年積み立てた実体験
はじめに
「フィリピンでもインデックス投資できるの?」できます。筆者はマカティ在住中、BPIのUITF(Unit Investment Trust Fund)を毎月数万ペソ積み立て、現在も運用継続中です。
BPI口座とBPI Tradeの使い分け
| 口座 | 用途 |
|---|---|
| BPI銀行口座 | UITFの購入・管理 |
| BPI Trade口座 | PSE個別株の売買 |
UITFだけやりたい方はBPI銀行口座だけでOKです。
UITFとは
UITF(Unit Investment Trust Fund)は、フィリピンの銀行が提供する投資信託型の金融商品です。日本の投資信託に近いイメージですが、運用主体が証券会社ではなく銀行である点が異なります。
概念としては日本の投資信託と似ていますが、仕組みにはいくつかの違いがあります。UITFは銀行の信託部門(Trust Department)が運用しており、フィリピン中央銀行(BSP:Bangko Sentral ng Pilipinas)の監督下に置かれています。日本のように金融庁が証券会社や投信会社を監督するのとは、規制の枠組みが異なります。
価格の単位はNAVPU(Net Asset Value Per Unit)と呼ばれ、日本の投資信託でいう基準価額に相当します。1ユニットあたりのNAVPUが毎営業日更新され、購入・解約はその価格をもとに計算されます。
日本との最も大きな違いのひとつは、情報の入手しやすさです。目論見書(Prospectus)・運用報告書はすべて英語で提供されており、日本語の解説はほぼ存在しません。投資判断に必要な情報を自力で英語で読む必要があります。
BPI UITFの種類一覧と特徴
BPIが提供するUITFには複数の種類があり、リスク・リターンの性格が異なります。筆者が利用していた当時の主なラインナップは以下のとおりです。
| ファンド名 | 特徴 | リスク |
|---|---|---|
| BPI Short-Term Fund | 短期国債・預金中心。元本割れリスクが低い | 低 |
| BPI Peso Bond Fund | フィリピン国債中心の債券ファンド | 低〜中 |
| BPI Balanced Fund | 債券と株式の組み合わせ | 中 |
| BPI Philippine Index Fund | PSEi(フィリピン株指数)連動型 | 高 |
| BPI Equity Fund | フィリピン株式に積極投資 | 高 |
筆者がメインで積み立てていたのは BPI Philippine Index Fund です。PSEi(Philippine Stock Exchange Index)に連動することを目指す、いわゆるインデックスファンドです。個別銘柄を選ぶ手間なく、フィリピン株式市場全体に分散投資できる点が選んだ理由でした。
BPIでのUITF購入方法
BPIのオンラインバンキングからUITFを購入・管理できます。支店に行く必要はありません。
実際の操作手順は以下のとおりです。
1. BPI Online Bankingにログイン PCまたはスマートフォンのブラウザからBPIオンラインバンキングにアクセスします。BPI appからも同様の操作が可能です。
2. 投資メニューへ移動 ログイン後のメニューから「Investments」または「UITF」を選択します。保有中のUITFの残高・NAVPU・評価損益がここで確認できます。
3. ファンドを選んで購入 「Invest Now」または「Buy」から購入したいファンドを選択し、投資金額を入力します。初回購入の最低金額はファンドによって異なりますが、BPI Philippine Index Fundの場合、当時はPHP 10,000前後が目安でした。追加購入(積み立て)はより少額から可能でした。
4. 確認して完了 内容を確認し、確定するとBPI銀行口座から投資金額が引き落とされます。翌営業日のNAVPUで取得ユニット数が確定し、残高に反映されます。
画面はすべて英語ですが、操作フローはシンプルです。初回だけ内容を丁寧に確認すれば、2回目以降はほぼ迷わず操作できました。
UITFの手数料・信託報酬の実態
UITFの費用構造は日本の投資信託と異なる部分があります。筆者が把握していた範囲での概要です。
| 費用の種類 | 概要 | BPI Philippine Index Fundの目安 |
|---|---|---|
| 購入時手数料(Sales Load) | 購入額に対してかかる手数料 | 約1% |
| 信託報酬相当(Trust Fee) | 年率換算でNAVPUに織り込まれる | 約1.5〜2%/年 |
| 解約手数料(Redemption Charge) | 短期解約時にかかるペナルティ | 保有期間により変動 |
最も注意すべきは 信託報酬相当の高さ です。日本の主要インデックスファンドが年率0.1%前後まで低下している昨今と比べると、BPI UITFの年率1.5〜2%は割高と言わざるを得ません。ただし、フィリピンでの投資手段の選択肢が限られることを考えると、「使える選択肢の中でベスト」という位置づけで選んでいました。
個人的な印象として、費用の透明性という点では日本の方がはるかに優れています。BPIのサイトでも手数料の詳細は確認できますが、日本のように運用会社が丁寧に解説しているわけではなく、自力で計算・確認する姿勢が必要です。
途中解約した場合のペナルティ
UITFには短期解約に対するペナルティ(Redemption Charge)が設定されています。BPI Philippine Index Fundの場合、当時の条件では概ね以下のようなルールでした。
- 保有90日未満での解約 → 解約金額の約1%を手数料として徴収
- 保有90日以上での解約 → 手数料なし(無料)
解約手続き自体はBPIオンラインバンキング上で完結します。解約を申請すると翌営業日のNAVPUで評価額が確定し、数営業日以内にBPI銀行口座に入金されます。株式のようにリアルタイムで売却できるわけではないため、「今すぐ現金が必要」という場面では即時性に限界があります。
急な出費に備えて、UITFとは別に緊急資金を銀行口座に残しておくことをおすすめします。
日本の投資信託との比較
| 項目 | BPI UITF | 日本の投資信託 |
|---|---|---|
| 購入方法 | オンラインバンキング | 証券会社・銀行アプリ |
| 情報量 | 英語のみ・少ない | 日本語・豊富 |
| 手数料 | やや高め | 低コスト化が進む |
| 使い勝手 | 日本より大変 | 使いやすい |
UITFとPSE個別株の比較
フィリピンで投資をしている日本人に多い悩みは「UITFで積み立てるべきか、PSEの個別株を買うべきか」という点です。筆者は両方を経験したうえで、以下のように整理しています。
| 比較項目 | UITF(インデックス型) | PSE個別株 |
|---|---|---|
| リスク分散 | 指数連動で自動分散 | 個別銘柄リスクあり |
| 情報収集の手間 | ほぼ不要 | 英語での企業調査が必要 |
| 流動性 | 翌営業日以降に解約可能 | 取引時間中いつでも売買可 |
| コスト | 信託報酬1.5〜2%/年 | 売買手数料0.25%前後 |
| 最低投資額 | PHP 1,000〜(追加購入時) | 1ロット単位(銘柄による) |
| 積み立てのしやすさ | 毎月定額で入金するだけ | 毎回銘柄・タイミングの判断が必要 |
個人的な印象として、フィリピンの個別株投資は英語での情報収集・流動性リスクの管理など、日本株と比べてハードルが高いです。本業が多忙な駐在員には、判断コストの低いUITFの方が継続しやすいと感じました。
実際の運用状況
毎月数万ペソを積み立て、現在も運用継続中です。
7年間の評価額の推移を振り返ると、PSEi自体の動きに大きく左右されました。積み立て開始から数年間は順調で、2017〜2018年のPSEi高値圏では評価額がコストを大きく上回る時期がありました。体感として「積み立てているだけで増えている」という感覚を初めて持てた時期でした。
しかし2018年後半以降はPSEiが大幅に調整し、評価額はピークから2〜3割以上目減りしました。その後2020年のCOVID-19による急落でさらに大きく下がり、長年積み立てた評価益がほぼ消えた時期もありました。
それでも積み立てを止めなかった理由は、ドルコスト平均法の効果への信頼です。株価が下がった局面では同じ投資金額でより多くのユニットを取得でき、その後の回復で効率よく評価額が増える構造は、7年間で身をもって実感しました。「下がっているから買いたくない」という感情に負けず積み立てを継続できたことが、長期的に見てもっとも重要な行動だったと思っています。
結論:UITFをおすすめできるか・できないか
7年間積み立てた筆者の率直な結論です。
UITFをおすすめできる人:
- フィリピンに在住しており、ペソで長期積み立てをしたい方
- 個別株の銘柄選びや英語での企業調査をする余裕がない方
- 多忙な駐在員で「ほったらかし運用」をしたい方
- PSEi全体への分散投資という形でフィリピン経済成長に乗りたい方
慎重になった方がいい人:
- コストを最優先に考える方(日本のインデックスファンドの方が圧倒的に安い)
- 短期での運用・解約を想定している方
- フィリピン在住でなく、わざわざUITFのためだけにBPI口座を維持する意味は薄い
- 日本語で情報が得られない環境に強い不安を感じる方
筆者の個人的な結論は「フィリピン在住中の長期積み立て手段として、UITFは十分に合理的な選択肢」です。ただし、帰国後も運用を続けるかは慎重に判断した方がいいと思っています。手数料の高さは長期になるほど響いてくるため、日本帰国後は日本の低コストインデックスファンドへの移行を検討する価値があります。
まとめ
フィリピンでのインデックス投資は日本ほど手軽ではありませんが、BPI UITFを使えばオンラインで積み立てることができます。
帰国後の現状と本音
記事の冒頭で「現在も運用継続中」と書いたが、正確には「解約できていないまま保有が続いている」という状態が正確だ。2026年現在の視点からUITFへの投資を振り返ると、かなり苦い結果になっている。
積立の実態
私がBPI Philippine Equity Index Fundへの積立を始めたのは2015年頃だ。当初は月5万ペソを毎月積み立てていた。2018年頃からは収入の増加と「もっと積極的に積み立てるべきだ」という判断から、月10万ペソに増額した。
2020年に帰国するまでの約5年間で、総積立額は概算で約420万ペソになる。当時の為替レートで換算すると、日本円にして900万円前後に相当する金額だ。
積立対象はBPI Philippine Equity Index Fundに一本化していた。PSEi(フィリピン株価指数)に連動するインデックスファンドであり、「個別銘柄を選ばなくていい」「フィリピン経済の成長に乗れる」という考え方で選んでいた。毎月定額を入金するだけという運用の手軽さも、多忙な駐在員生活の中では大きなメリットだった。
帰国後の対応
2020年の帰国と同時に、積立は中止した。フィリピンを離れた後も口座自体は維持しており、保有しているユニットはそのままにしている。
帰国後に困ったのは、解約・換金の手続きだ。BPIのオンラインバンキングから解約の申請自体は可能だが、換金されたペソを日本円に替えて日本に持ち帰るには、実際にフィリピンを訪問する必要がある。国際送金という手段もあるが、手続きが煩雑なこともあり、私はフィリピン訪問のタイミングで現金を持ち帰る方法を選んでいる。
ただし、日本の税関のルールとして、持ち込む現金が100万円を超える場合は申告が必要になる。そのため、毎回の換金・持ち帰り額を100万円以下に抑えるよう調整している。年に1〜2回程度しかフィリピンへの訪問機会がない中では、残高の解消にはかなりの時間がかかりそうだ。
現在の損益:正直に書く
現時点での評価額は、積み立てた総額を大きく下回っている。つまり、かなりのマイナスだ。
BPI Philippine Equity Index FundはPSEiに連動しているため、PSEiの動きをそのまま受ける。PSEiは2018年をピークに長期低迷が続いており、2020年のCOVID-19ショックで一時的に大きく下落した後、現在に至るまで本格的な回復を見せていない。
私の感覚では、積み立てたペソの総額に対して、評価額はかなりの乖離がある。具体的な金額の公開は控えるが、日本円換算で数百万円規模の含み損が発生しているとみている。「大きくマイナス」という表現がそのまま当てはまる状況だ。
本音を言えば、早く全部解約してしまいたい。保有を続けることに積極的な理由を、今は見つけにくくなっている。
それでも踏み切れない理由
それでも解約に踏み切れていない理由がいくつかある。
まず、損失を確定することへの抵抗感だ。今解約すれば、マイナスが確定する。「含み損」のうちは「まだ終わっていない」という感覚がどこかに残っている。これは投資家が陥りやすい心理的バイアスだとわかっていても、実際に大きな金額を前にすると、割り切るのは難しい。
次に、「いつか戻るかもしれない」という期待だ。PSEiがかつて7,000〜8,000ポイント台をつけていた時期があったことを知っている。現在の水準から見れば回復の可能性がゼロとは言えない。ただし、「いつ戻るか」は誰にもわからないし、私自身もフィリピン経済の先行きについて楽観的な見通しを持てているわけではない。
最後に、手続きの面倒さがある。前述のとおり、換金には実際にフィリピンを訪問する必要があり、年に数回の訪問機会の中で少しずつ解約・換金するペースでしか進んでいない。このままでは全額整理するのにかなりの年数がかかる。わかってはいるが、現実的にそれ以外の方法が取りにくい。
インデックスファンドなら安全、という思い込み
今回の経験で気づいたことがある。「インデックスファンドは分散されているから安全」という認識は、投資する市場を間違えると意味をなさないということだ。
私はUITFと並行して、フィリピン個別株(SHLPHやCHP、C社など)にも投資していた。これらも現在は大きくマイナスになっている。インデックスファンドも個別株も、フィリピン株式市場に投資した結果として、軒並みマイナスという状況になった。
インデックス投資が分散してくれるのは、個別銘柄リスクだ。市場全体が長期低迷するリスクは、インデックスでも回避できない。頭ではわかっていたことだが、実際に長期にわたる低迷を経験すると、その意味をあらためて実感する。
「フィリピン経済は成長する」という前提が、私の投資判断の根拠にあった。その前提が崩れたとき、インデックスファンドも個別株も、同じように機能しなかった。分散投資の効果が発揮される範囲と、その限界を身をもって学んだ経験だったと思っている。
今後の方針
帰国後は、日本株・米国株・インデックス投資(主にS&P500連動型)にシフトしている。フィリピン市場への新規投資は、現時点では考えていない。
残っているBPIのUITFと個別株については、フィリピンを訪問するたびに少しずつ整理していく方針だ。一度に全額解約するのが理想だが、税関申告の都合や訪問機会の制約から、時間をかけて対応するしかない。
あまりスマートな結末ではないが、これが現実だ。UITFをはじめとするフィリピン投資の経験は、「市場の選択が重要である」「インデックス投資でも市場環境には勝てない」「解約のタイミングと手続きのしやすさも投資判断の一部である」という教訓を残してくれた。
今後フィリピンに赴任される方や、フィリピン国内での投資を検討されている方の参考になれば幸いだが、私の経験はあくまでもひとつの事例に過ぎない。市場環境は常に変化するため、最終的な判断は自身でされることをお願いしたい。
※この記事は2013〜2020年の体験をもとにしています。現在の状況は変更されている可能性があります。必ず最新情報をご確認ください。
※投資は自己責任でお願いします。